消防団員を5年経験して振り返るメリット・デメリット

消防団




自分たちの町は自分たちで守る 崇高なる消防精神

とは言うものの、私個人的にはその崇高なる消防精神は感じられなかったし、メリットもほとんどなかった。地域によって消防団の在り方や重要性も異なるが、私の場合は地方の県庁所在地での場合で、私個人が感じたメリット・デメリットだ。

メリット

人脈が広がった

他の団員や地域の方々と顔を合わせる機会が増えます。個人事業主の方などはここで作った人脈を仕事につなげている方も多くいました。

比較的、似たような人が集まりやすいので、気の合う友人を作ることもできます。個人的感覚ですが、楽観的、おしゃべり好き、宴会好き、お人よし、仕事以外の趣味も豊富、な方々が多いのではないでしょうか。

 

ラッパが少し上手になった

音楽隊にも所属させていただいた。ラッパ隊は都道府県によっては存在しないかもしれません。ラッパを吹くことで腹式呼吸の練習になるので、カラオケ好きな私には上達に大変役に立ちました。ラッパ吹きは歌の上手い方が多いです。

 

タダ酒が飲める

これはもはやメリットと呼べるのか微妙になってきました。確かにお酒を飲む機会は多く自腹を切ることもほぼないのですが、お酒はイメージが悪い。そもそも、団員本人としてはタダ酒だが、そのお金は税金や地区から出されたものなのだ。

最近の消防団員の勧誘では、お酒が飲めなくても大丈夫、昔より飲む機会は減ったことをアピールすることもありますが、実際はまだまだ飲む機会はあるし、お酒が飲めた方が活動も楽しめるし、酒好きは消防団員には向いていると言えます。

 

社会貢献している実感

真面目に消防団員として活動に励んでいる方もいらっしゃいます。地域とのかかわり、防災への貢献を通して、自身の価値を感じることもできるでしょう。

残念ながら、私にはデメリットの方が大きすぎました。

 

消防団員制度が問題だらけだとわかった

問題の詳細はデメリットで書きます。デメリットが分かったのはメリットですね。

そもそも上記に挙げたメリットがどれも消防団員固有のメリットではない時点で問題があります。人脈を広げることも、ラッパを吹くことも、消防団でなければできないわけではありません。




 

デメリット

時間を拘束される

火事場での初期消火と消防隊のお手伝いだけが団員の仕事なのかと思ったがそうではなかった。

会議があります。火災予防の広報活動があります。器具点検があります。地区の防災訓練に出席します。花火を伴う地区のお祭りの警戒があります。消防団員が対象の防災訓練があります。懇親会(飲み会)が多くあります(懇親会・慰労会・新年会・暑気払い・忘年会・etc.)

年度によっては、ポンプ操法大会の練習・出場があります。音楽隊もラッパ吹奏大会があります。

消防団員内での役職が上がればさらに増えます。

私にとっては普通の団員としての活動もかなり負担となった。一人暮らしをしていたせいもあると思います。

仕事が忙しい方、他にやりたい事が多い方、生活リズムが不規則な方には向いていません

 

家族にも負担がかかる

また、たとえ本人に時間がある場合でも、家庭を持っている方は家族の方に大きな負担がかかっている場合もあるはずです。特に小さいお子さんをお持ちの家庭は大変でしょう。奥様の不平不満が募りに募ります。

 

金銭的メリットはほとんどなし

多少の出動手当や退職手当はありますが、活動量に比べればごくわずかです。わりには合いません。ボランティアだから当たり前と言えばそうなのですが、そもそもこれだけの業務をボランティアにやらせようという行政の魂胆がおかしい

 

おかしなおかしな消防団

防災は行政の仕事である。我々はそれに対する税金も払っている。その上、無料奉仕しろとはおかしな話だ。

昔のままの消防団員制度

昔はこれで良かったかもしれない。消防隊が来るまでの初期消火は重要だろう。特に地方においてはだ。地元に詳しく、消防隊より早く駆け付けることができる消防団員は重要だったはずだ。しかし、今は違う。携帯電話のおかげで通報が早く正確になった。GPSはさらに正確な情報をもたらす。消防署も効果的に整備され到着も早くなった。IT技術のおかげで、道に迷うことも、消火栓を探す手間もほとんどないはずだ。消防団員制度はもう時代にそぐわない。昔からあった制度がそのまま、だらだら残っているだけだ。

こういうことを言うと、それでも消防団員の土地勘・初期消火は大事で、一刻を争う火災において犠牲が多くなってもいいのか!?と言われてしまいます。

 

消防団員の必要性

確かに土地勘・初期消火は大事であり、消防団員による人海戦術は大変有用なものです。しかし、それは消防団員である必要があるのでしょうか。本当に自分たちの町は自分たちで守るのであれば、消防団員などというくくりにとらわれず、地域住民全員で行うべきだ。消防団員といえど、常に地元にいるわけではない。今や仕事先も地元から離れず生家の近くの人はまれだ。それよりは、火災現場の近くにいる地域住民で対応するのが普通ではないか。あまり危険な消火活動は消防団員だってできない、最低限のことは何も消防団員ではなくてもできるではないか。消火器の使い方、消火栓の位置、ホースや筒先などの器具のある場所、そんなに難しいことはない。いまや女性消防団員もいる。そのための防災訓練をやるべきだろう。

 

大規模災害時の対応

消防団員が必要な理由として、大規模災害発生時のためというものがあります。確かに大地震等が発生した場合においては、行政だけでの対応は難しいでしょう。しかし、だからと言って消防団員が必要かというと、私はそうではない気がします。

大規模災害時には消防団員と言えど無事とは限りません。消防団員に頼るよりは、その場にいるボランティア精神豊富な動ける人間に頼った方がいい。少なくとも、私のような消防団員時代に大規模災害時を想定した訓練など受けていない人間よりは役に立つのではないのでしょうか。

 

問題が多い消防団

消防団員自体必要なのか

そういった議論は多いです。上記に述べたことも関係があるのでしょう。制度自体よく考える必要があります。そしてそれは行政の仕事です。消防団員の仕事ではありません。こういう問題があると、消防団員としてもモチベーションが上がりません。

 

飲み会が多い

飲み会が多いことも問題視されています。消防団員は飲んでばかり、と。火事も何もなく平和であれば別にいいでしょうし、懇親・慰労の意味もよくわかります。昔よりは、飲む機会も減っています。しかし、それでも多い方でしょう。酒好きにはいいでしょうが、そうでない人も最近は多くなりました。「飲みにケーション」はもう古い考え方です。酒でしか築けない関係なら必要ないでしょう。飲んで騒ぐだけの時間は無駄です。

 

ポンプ操法大会の意義

もはやスポーツ競技のレベルですね。消防技術の向上をうたってはいますが、どう考えても実際の消防活動と関係がありません。大会で良い成績を修めることのみが目標になってしまっています。

全ての団員に操法技術の習得を目指すならともかく、実際は一部の優秀な団員にのみ集中的に訓練するのみです。

趣味のレベルで競技として楽しめる人だけでやっていただきたい。こんな大会をやるくらいなら、もっと実践的な消防活動の講習会・勉強会を増やすべきだ。

 

音楽隊の意義

吹奏隊とラッパ隊がありますが、立場が微妙に違います。吹奏隊は団本部所属となり基本的に音楽活動しかしません。地域の消防団員としての活動はしていません。なかには、両立して頑張っていらっしゃる方もおりますが少数です。ラッパ隊は地元の消防団員として、通常の活動もしつつ、ラッパ隊の活動もします。吹奏隊に対する疑問の声は時々あがります。消防活動をしないのに消防団扱いなのはいかがなものか

 

予算の問題

行政や地域団体からの活動費でまかなっているようですが、年々予算は低下。上役の方々は頭を悩ませています。飲み会が減っている一つの理由でもあります。無論、予算がなければ本業である消防団活動にもできない部分が出てきます。ボランティアでなぜこんな予算のやりくりで悩まなければならないのでしょう。

 

消防団員の減少・高齢化

今まで述べた通り、消防団員になるには魅力が全くありません。入団希望者も少なく、入ったら最後、辞めることもできません。嫌になったら幽霊団員になるしかない。必然的に高齢化しており、そんな年寄りだらけの団体が若者に魅力的にみえるわけがない。

ただ、地域によっては、消防団員になるのに順番待ちという人気地区もあるようですね。

 

消防団員には独身者が多い

消防団員に限らず未婚率は上がっていますが、消防団員には人柄はいいのに独身という方が特に多いのが実感です。原因はわかりませんが、消防団のイメージとしてはプラスになりません。最近は、現状を憂えてか行政が消防団員の婚活をサポートし始めていますが、なかなか成果は上がっていないようですね。

 

うつ病、過労死

ここまでくるとシャレにならないが、本当にあるので困ったことだ。

私の経験で心療内科の問診票に「眠れない」「死にたい」などの項目のほかに「消防団が負担」という項目があったのを覚えています。忙しい中で真面目に責任を持って活動をしすぎると、うつ病になる可能性もあるのでしょう。

また、かなり消防団での役職が上の人ですが、活動中に亡くなって、過労死と認定された方がいたそうです。滅多にないことだと思いますが、ボランティア活動で過労死なんて、こんな馬鹿な話があっていいわけがない。

このあたりの問題は行政によく考えてもらいたいです。

 

まとめ

いろいろ大変だし問題はあるが、消防バカと呼ばれる程、楽しんで積極的に活動する団員が多いのも事実。消防団員がつとまるかは、楽しんでやれるかどうかがポイントのようです。私は楽しむ余裕がなかったので無理でした。いろいろ問題を挙げましたが、消防団に限らず同じような問題を抱える団体・組織は多いのではないでしょうか。

先にも述べましたが、団員ではどうしようもない問題ばかりです。私個人の意見としては、消防団は必要ないと思います。だから誘われようとも、もう絶対に入団しません。もし火事になって、消防団員の助けもなく、消防隊の到着も遅れるような事態に遭遇しても、いさぎよくあきらめることにします。自分でどうしようもできないことで悩んでも仕方ありませんから。

他人任せと思われてしまいますが、行政にはしっかりこの問題を考えてもらいたいです。

 

提案

どうしても消防団が必要だというのなら、学校教育で取り入れたらいいのではないだろうか。防災を学ぶとともにその技術も学ぶといいと思う。それに消防団制度のことを早くに知ってもらえば、消防団どころか消防士になろうという子どもも育つと思う。私なんぞは、学生時代には消防団の存在自体知らずに過ごした。行政はもっと広報に力を入れるべきだろう。

中学生にもなれば、知能・体力とも問題ない。高齢化が進んでいる消防団より実際頼りになるだろう。未来ある子供に危険な業務はさせられないということを言い出す人もいるだろうが、的外れな意見だ。そもそも、素人集団である消防団は絶対に危険な作業は行わない。そこは大人たちが指揮・指導すれば済む話だ。それに純粋な子どもたちの方が、災害時に協力してみんなを助けようという気持ちが強いはずだ。

中学生が幼すぎるなら、高校生・大学生でもいいだろう。義務教育ではないが、防災や消防技術を学ばせることは意義のあることだ。国民全体の防災意識向上、災害時の訓練になる。消防団の加入促進にもつながるだろう。そういったことをやらずに、現状維持に必死だからこそ、消防団に批判が集まるのだ。

 

追記

最初はブログで文章を書く練習にササッと書いたのが、この消防団員に関するブログ記事でした。しかし、私の予想に反して、なぜか意外に多くの人に読まれていました。

これはまずいと思って、何回か加筆修正しています。結果、最初の時より倍以上の文字数になりました。

それでもまだまだ拙い文章ですが、読んでくださった方の参考になれば幸いです。

目下の心配事は、当時一緒に活動した団員さんに見つかって、色々言われると嫌だなあと戦々恐々としていますが、いらぬ心配でしょう。こんな小心者だから消防団員には向いていなかったのかもしれません。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

うつ病手前になって退職したり、会社から損害賠償求められたり、逆に精神的苦痛に対する慰謝料を請求したり、アパートの退去で高額の原状回復費用を求められたり、円錐角膜という病気になったり、そんな人生をブログにしてます。 現在は仕事を探している。 長野市で開催されるコンセプトカフェイベント「ルドロウキャッスル」を応援しています。