消防団員はこんな仕事をする
以前に消防団員になるメリット・デメリットというブログを書いたが、消防団員制度に批判的な意見が主で、実際どのような活動をしているのか詳細には書かなかったので、その辺りをもう少し具体的に私の実体験から書いてみたいと思う。消防団員に興味のある人、誘われている人、入団が決まった人への参考になれば幸いである。
↓メリット・デメリットについてはコチラのブログを参照↓
緊急の仕事
火災出動
消防団員のメイン業務であるが、できれが起きて欲しくないのがこの火災出動だ。といっても、実際の消火活動は本職である消防隊が行うので、消防団員の仕事は雑用が主になる。
最初に現場に到着したのが消防団員だけであれば、初期消火を行うこともあるが、危険な場合も多いので周囲の安全確保が優先である。消防団員と言えどもとにかく安全第一である。
火災現場での具体的な仕事は、消火栓の確保、交通誘導、一般人の立入禁止措置、消火後の跡片付け、鎮火後の監視などである。消防団の役員であれば、消防隊との連携、団員の管理業務などが増える。
雑用とはいえ、二次災害の防止や鎮火後の再火災を防ぐことにつながる重要な仕事である。
ただ、仕事自体は難しいものではなく、突っ立っているだけの場合も多いが、火災の発生はだいたい冬季や夜間なので、寒さに震えながら徹夜になることもあるから、それなりにきつい仕事である。徹夜明けにはみんな普通に自分の本来の職場に出勤していくのだから大したものだと思う。
私の経験でも、ある真冬の火災で徹夜の3日後にまた別の火災が発生して徹夜したこともあった。その間、普通に会社にも出勤したのでかなりきつかった覚えがある。
いつ何時起こるか分からないのが火災なので仕方のないことだが、相応の覚悟は必要である。また、人命にかかわる緊急事態には違いないため、正確な即断即決が求められる場面もないとは限らない。出動するからには自分の行動に責任が求められるのは当然のことであることは肝に銘じておきたい仕事だ。
行方不明者の捜索
消防団員の人海戦術での捜索である。事件性の少ない行方不明者の捜索ということで、対象は痴ほう症の疑いのある高齢者が多かったと思う。人員の集まりやすい夜間か早朝の捜索が多いが、河川や山林などの危険な場所は都合のつく人員で昼間に行う。残念ながら、仏さんとなった行方不明者を発見することもまれにある。
通常の仕事
点検・予防活動や訓練が主である。
点検としては、器具庫の備品の点検や、地区内にある防火器具の点検、防火水槽の水位確認など。
雪の積もった時などは、消火栓の周りの雪かきも行う。こういった活動はいざという時に本当に役に立つので価値のある活動と言える。
予防活動としては、広報車による火災予防運動の実施である。
地区や分団、班などでかなり頻度や内容にバラツキはあるが、規律訓練や放水訓練なども行う。普通救命講習なども受けることができる場合もある。
あとは団員としての地位が上がると事務仕事がかなり増えることになる。
地区行事への参加
防災活動の一環として、地区や市町村の行事への参加も主な仕事の一つだ。
地区の防災訓練への参加はもちろん、火の使用を伴う地区行事への防火対策としての参加もある。具体的には、どんど焼きや、お祭りでの花火などだ。
特に花火は地区役員と花火師らとの連携作業になり、規模によっては深夜まで花火後の見回りが必要になる。防火の名目でかなりの至近距離から花火を鑑賞できるという特典付きだ。
消火・防火には水の入ったリュックのようなものを背負って水鉄砲のように水を飛ばしす”シューター”と呼ばれるものを使う。
大きな行事
出初式
ニュースなどで目にしたことがある方もいると思われるが、毎年1月上旬に市町村及び消防署はじめ、関係団体と消防団も含めた大規模な市中パレードが行われる。人数の都合上、消防団員全員が参加するわけではないが毎年の恒例行事である。
ポンプ操法大会
こちらも毎年恒例の行事である。市区町村大会から、県大会、全国大会まである。選手は自身の仕事の合間をぬって、数か月間、夜間早朝に厳しい訓練を行う。そして、それを他の消防団員はサポートして、大会で好成績を修めることを目的とする。
大会は毎年行われるが、人数の多い地域は持ち回りで5年に一度くらいの頻度で参加する。人数の少ない地域は毎年全員参加のところもある。
ポンプ操法大会の詳細については他のサイトを参照してほしい。
ラッパ隊
音楽隊の中のラッパ隊については地域によっては存在しない場合もある。ラッパ隊については上記の仕事もこなしつつ、ラッパ隊独自の活動も行う。
通常訓練
週に1~3回集まってラッパの練習をする。
式典吹奏
出初式やポンプ操法大会などでの式典吹奏がある。
ラッパ吹奏大会
ポンプ操法大会と同時に行うことが多い。ラッパ隊の人数は少ないので、ポンプ操法大会が持ち回り参加の地区でも、毎年参加することになる。
地区行事での吹奏
マラソン大会での吹奏依頼が多い。ラッパの音は景気づけには大変良い。
御柱祭りでの吹奏
長野県諏訪市、諏訪大社の御柱祭りは有名であるが、各地にある諏訪大社の分社でも御柱祭りが行われる。そこでもラッパ隊の出番はある。市町村内に諏訪大社系が多いと大変な苦労となるが、7年に一度なら割り切れる。
対価と補償とやりがい
活動手当
上記のような仕事をこなすことで一定の活動手当は支給される。また、在籍期間によって退職金も支給される。だが、ボランティアであるため最低賃金にも満たない金額だ。もらえるだけありがたいと思うべきかもしれない。
そして、原則は各個人に支給されるが、実際に個人に支給される額はわずかである。分団や各班の活動費として使用されることが多い。必要な消耗品や備品、活動時の食費になどに充てられる。宴会に使われる場合もあるが、お酒の問題は賛否両論ある。
補償
準公務員扱いなので、労災の適用がある。危険な作業をすることもあるので、公務員の労災制度が適用されることは、万が一の時の安心になる。一般の企業の補償より当然厚い補償となるので、「消防団員は死ぬときは法被か活動服を着ろ」などと冗談として言われることもある。
やりがい
災害対応、防災活動、地域とのかかわりから、やりがいをもって活動している団員もいるし、とてもいいことだとは思うが、このあたりの意識は団員によって大きく異なる。
また、多くの人が普通の仕事もこなしつつ、消防団員としても働いているので、何らかのモチベーションがなければ活動を続けることは難しい。とにかく時間の拘束が多いのだ。消防団員の幹部クラスになればさらに大変になる。過労死した消防団員の話も聞いたことがある。
だが、悪いことばかりでもなく、地域貢献をとおして得られた人脈や信頼、仲間たちはかけがえのない財産となる。
問題は多くある消防団員だが、各人の無理のない範囲で活動するべきだろう。実際、火災発生時や通常の活動でも、個人の仕事や家庭が優先でいいのである。団員としての地位が上がれば責任が大きくなるが、必要以上に責任感を感じてしまうと、逃げられなくなり過労死ということもあり得る。
消防団員は辞められるのか
消防団員の定年は以前は55歳だったが、現在は65歳まで引き上げられている。人手不足が原因の一つだろう。
定年以外では、分団長まで経験した後に退団するケースも多い。
そのような実績を持って辞めるケースであれば何も問題ない。では途中で辞めることはできるのか。
ちなみに、私が消防団員を辞めた理由は引っ越しだった。所属地区が完全に変わってしまうので続けることが不可能になったからだ。単身赴任のように実家があるならば、籍だけ残しておくこともできたかもしれないが、私の場合は実家も別の地区なので戻ることもあり得ないからだ。
このようなやむを得ない理由以外で辞めることはできるのだろうか。退団届を提出すれば手続き上は可能だが、実際はなかなか難しいだろう。
消防団は人との結びつきが非常に強い。同僚である団員同士の他に、近所の人や地区役員との結びつきも強くなる。人手不足であれば、地方であればなおさらだ。そして、職場の同僚や取引先・顧客にも消防団がいる環境ではさらに結びつきは強い。そのようおな状況であれば、自分だけが辞めることは後ろ指をさされることになる。その覚悟あれば辞めることは可能だろうが、多くの人は二の足を踏むだろう。
消防団は地元に根差していることも辞められない理由の一つだ。地元に住んでいれば、消防団は辞めても関係を完全に切ることは難しい。さらに、地元に家族・親族がいれば、ますます関係は切れないだろう。消防団の同調圧力は凄まじいものがある。
そういう背景もあってか、消防団は幽霊団員も多い。自分から辞めるのが難しければ、辞めてくれと言われるようにするしかないのかもしれない。ここにも消防団の大きな問題が潜んでいると言える。
苦しければ逃げるしかない
それでも辞めたければ、いわゆるバックレしかない。後のことは残された人に勝手に任せて、何を言われようと返事をしないことだ。
無理に続けるのは危険だ。
心療内科の問診票には、「眠れない」「死にたい」などのチェック項目のほかに「消防団が負担」という項目もあった。消防団のせいでうつ病になってしまう人もいるということだ。無理に続けるのは本当に危険だ。
消防団での役職はかなり上の人だが活動中に過労死で亡くなった人も過去にはいると聞いたことがある。責任をもって業務を遂行するのは良いが死んでしまっては意味がない。
逃げる決断は早い方がいいだろう。
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