サラリーマン社会の矛盾
今年も第一生命が主催する「サラリーマン川柳」のノミネート100作品が公開された。現在投票を受付中である(3/16まで)。
http://event.dai-ichi-life.co.jp/company/senryu/
IT関連の作品が多くなったと言われる今年度の作品群だが、私が一番気になった作品はこれだ。
人減らし 「定時であがれ 結果出せ」
この川柳には現代のサラリーマン社会の矛盾点が皮肉たっぷりに見事に表現されている。早速、この川柳に一票を投じてきたところだ。
矛盾だらけのこの一句
会社の上司が部下に飛ばした命令をそのままストレートに句にした本作品。読めばわかるが、サラリーマンである部下が感じる矛盾を見ていこう。
会社は経費削減のため「人減らし」をするが、少ない人数でも「結果出せ」という理不尽極まりない状況。結果を出すには作業の分担と協力が必要だが、人を減らされてしまったらそれも難しくなる。逆に結果を出せなくなる矛盾。
さらには、昨今の過労死問題を受けてか労働基準法を守るべく、「定時であがれ」との命令。こんな命令を出すということは、以前はサービス残業が横行していたのだろうが、今までサービス残業で結果を出してきたのであれば、定時の限られた時間で結果を出すのは難しいだろう。これも矛盾している。
そして、経費削減で人を減らしつつ、残業代も出せずに定時あがりを命令するのだから、この会社は何がしたいのかよくわからない。必要な経費を出し渋って結果が出るはずもない。この会社は矛盾した状態に陥っている。
このように働く側からみても、会社からみても、矛盾しかないのだ。ここにこの川柳の面白さがある。
しかし、現実にはこのような矛盾した命令をする上司は意外にいる。次はそのあたりの事情と対策を考えてみよう。
「結果出せ」という命令自体が既に矛盾している
会社=企業は利益を上げることが目的である。そして、リスクとコストは最小限に抑える必要がある。そういった面で見ると、「定時であがれ 結果出せ」は矛盾はしているが企業にとっては確かに一理ある。
このような命令を出す上司は2パターン存在する。1つはこの矛盾に気がつかずにただ命令するばかりの上司。もう1つは矛盾は承知の上で本気で定時で結果を出させようとする上司である。
前者は中間管理職で本人も上層部から同じように命令されている悲哀に満ちたつらい立場の管理職である。やがて矛盾に気がつけば部下に多少の同情はしてくれるだろう。
一方、後者の上司は部下にとって理不尽極まりない困った上司である。この矛盾した無理難題を解決せよと迫ってくるからである。これはブラック企業の経営者かと思うかもしれないが、ブラック企業なら絶対に「定時であがれ」とは言わずに無限に働かせるので、まだましな方だ。この上司の問題は、自分にも解決できない矛盾した無理難題を部下に押しつけることである。
そもそも、つまるところ「結果出せ」という命令自体がおかしいのだ。
結果が出るかどうかは全て上司の指示命令にかかっているからだ。結果を出せば命令を出した上司の手柄となるし、また失敗した場合は上司の責任となる。結果を出さなければならないのは上司なのだ。ここにも矛盾が存在する。
部下としての対応方法
1つはそんな理不尽な上司には早々に見切りをつけることだ。根本的な解決にはならないが、そのような上司につきあって自分が追い詰められてしまっては、結局、損をするのは自分だけになってしまう。上で述べた上司の2パターンのうち、後者のタイプであれば改善の余地はあまりない。私自身、そのような上司に従って精神的にダメージを負って退職した身なので良いことは一つもないと断言できる。会社を辞めるか、配置転換を願い出るしかないだろう。
2つ目の対応方法としては、対話によって上司と協力して仕事続ける方法である。案外、上司も悩んでいたり、責任を恐れている場合もある。そのような場合は上司と対話や協力が可能である。また、部下が結果を出さなければ上司の責任になってしまうということを考えれば、部下は上司への報告・連絡・相談を怠ってはいけないのであり、普通は協力して仕事をするはずなのである。ただこの場合注意が必要なのは、上司が部下に過剰な責任や損害賠償を押しつけないという前提があって初めて成立する関係だということだ。それがなければブラック企業になってしまう。本来、労働契約とはそういったものだ。
3つ目の対応方法としては、上司の命令通りに定時であがりつつも結果を出してしまうことである。なかなかこのような優秀な人間は少ないだろうが、一度はチャレンジすべきであろう。もし、達成できたのなら評価されるだろうし、社内で評価されないのならもっと自分を高く評価してくれる会社を探すか、自ら起業する道もある。
上司が理不尽でも何かしらの解決方法はあるが、どれも楽な道ではないのは確かだ。
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