10年住んだ3DKアパートの大家からの原状回復費用請求が20万越えだった話



ことの始まり

会社を辞める有給休暇消化中の出来事だ。ある日、不動産担当者から電話があった。

「アパートの原状回復費用の請求書送るけど、見てびっくりしないでくれ、敷金で相殺しきれないとんでもない金額になっているから」とのこと。

私は、3DKのアパートに約10年間住んでいたが、これはおかしな話で通常、長く居住すればするほど、経年劣化や自然消耗が考慮されるので、故意・過失による損傷などなければ、高額になることは少ないはずなのだ。毎月の家賃の中にその分の修繕費用も含まれていると考えるのが普通だ。これは国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を読めば明らかである。

 

もう一つの問題

さて、私にはここでもう一つ厄介な問題がある。アパートの大家は私がうつ病手前にまでなった元凶の人なのだ。会社の上司でもあるのだ。

この電話を受け、私は久しぶりに動悸と胸が締め付けられる思いがした。嫌でもあの上司を思い出してしまう。高額な原状回復費用請求などやりそうなことだった。

私はまだ手元に残っていた抗不安剤を飲んだ。少し落ち着いた。

このあたりの問題は別のブログ記事で紹介します。

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さらに厄介な問題

そしてまた別の厄介な問題があるのを思い出した。最近入金した給料から退去した後の月の家賃が天引きされていたのだ。ずっと給与天引きなので間違えて差し引いたのか、すぐ返してもらえると甘く考えていた。上司に関わりたくないのもあって先延ばししていた。

高額の原状回復費用など、理不尽な内容であれば払わなければいいと思ったが、天引きされた余分な家賃は原状回復に充当される恐れがある。本来は別の話であるべきだが、そういう理屈が通じにくい相手なのだ。

※しかし、この問題は杞憂だった。経理担当者が間違えて差し引いただけだった。人騒がせな…これは後程返金された。

 

現時点での対策

考えられる対策は3つ。

①上司と直接直談判。

②社長に相談する。

③公的機関に相談する。

まずは普通①だが、精神的に相当キツイ。②については、社長は力になってくれるだろうが、家賃と敷金・原状回復は個人間のトラブルなので限界があろう。そうなると③しかない。

ネットで調べたところ、国民生活センターという相談機関があるようだ。市町村レベルだと消費生活センターというようだ。原状回復の請求書が届いたらまずはここに行くことにしよう。

いずれにせよ、原状回復費用の見積書の到着を待つしかない。

 

請求書の到着

請求書の金額は217,000円だった。始めにびっくりするなと言われていたからまだよかったが、とんでもない金額だ。数人から意見を聞いたが、全員おかしいと言ってくれた。

国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をざっと読んだので、明らかにおかしいのは分かったが具体的にどう対抗していくべきか、やはり消費生活センターへ行くことにした。

 

消費生活センターへ

電話で説明するのは面倒なので直接行くことにしたが、行ったらご予約は?と聞かれてしまった。すぐ相談室に通してはくれたが、相談内容によっては事前予約した方がスムーズなのかもしれない。

請求書と賃貸借契約書を見せて話を聞いてもらった。

相談の答えとしては、このケースなら故意・過失による毀損がないのであれば賃借人の負担は無いのが普通とのことだった。

さらにこうも言ってくれた。「10年も住んでくれたなら、大家は『10年も住んでくれてありがとう』って言うのが当たり前ですよ」と。

 

この金額(単価)の妥当性

支払う必要はなさそうだが、この金額はそもそも高いのか安いのか、それを見極めるにはどうしたよいか、一応書き残しておく。

単価は業者によって違う

直す箇所が多いので3DKで20万円越えとなったが、個々の修理箇所の単価はとりわけ高いわけではない。これより安くやってくれる施工会社もあるだろうが、この見積もりが不当に高いとは言い切れない。ぼったくり業者ならもっと高い単価で見積するはずだ。

だから消費生活センターも単価については特に何も問題を指摘しなかった。業者によって多少の単価の違いは当然ありうるのだ。

「諸経費」はどう考えるか

ただ、「諸経費」については根拠の不明な必要のない項目だと消費生活センターの担当者は指摘した。通常「諸経費」というものは個々の単価に含まれているはずだというのが消費生活センターの認識だ。

確かに一理あるのだが、この業者の場合は個々の単価とそれにかかる諸経費を明確に分けて算出しているだけであろう。公共工事などは小規模な工事であっても諸経費は分けて算出されるが、そのような業界の特有の事情を消費生活センターの人は知らないのだろう。だから、一概に諸経費が悪いわけではない。

素人では単価の妥当性を見極めるのは無理

結論すると、金額の妥当性を見極めるのは素人では無理だ。消費生活センターの方に聞いた方がいいだろう。上記の見積書もある程度参考になるだろう。極端に高い場合は他の業者に見積を頼むなどの対策が必要になる。だが、その前にその修理箇所を負担すべきなのは誰なのかをはっきりさせてからの問題だ。

 

原状回復の考え方まとめ

消費生活センターとの相談、及び国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をさらっと読んだところで、おおざっぱに簡単にまとめてみた。

 大前提

原状回復に対して直接取り締まる法律が無い。つまり基本的には貸主・借主の双方の話し合いで解決するしかないということだ。よって、賃貸借契約書に原状回復についてどう記載されているかが重要になる。

 基本的な考え方

経年劣化・自然消耗は貸主負担

故意・過失による毀損があった場合は借主負担

 借主の負担費用の考え方

・故意・過失により毀損させた部分だけ負担する

(クロスの一部を汚したならその部分だけ。壁一面を負担する必要はない。)

・故意・過失により毀損させた部分においても、経年劣化を考慮して負担費用を決める。

(極端にいえば耐用年数を超えていれば1円の価値しかないので1円の負担で良い。但し、通常は耐用年数が過ぎても使い続けることが多いので、応分の負担をしなければならない場合もある。例えば、故意・過失により設備を破壊した場合や、床に落書きをした場合など。)

 自分の身を守るために知っておきたいこと

悪質な大家はとにかく何でもかんでも費用請求してくるので、こちらも知識が必要。

借主に非があることを証明しなければならないのは貸主であるのが大前提

クロスが剥がれている、床に穴が開いている、襖が汚れているなどと言われても、故意・過失ではなく全く身に覚えがないことであれば、拒否しよう。

クロスが剝がれるのは、そもそも施工が悪い可能性もあるし、使用された接着剤が悪い場合もあし、クロス自体が安物だったり品質が悪い場合もある。

汚れなどについても、素材の品質が悪く汚れやすい場合もあるし、襖紙のような薄いものだと長い年月をかけて接着剤部分がシミのように浮くこともある。

その辺りを考慮した上で、借主の故意・過失を証明するのは貸主の義務なのだ。消費生活センターの相談員はそう語った。

逆に貸主の立場で言えば、入居前に借主と現状をよく確認して、写真を撮って残しておくなどの対策が必要ということだ。借主から最初から毀損していた、汚れていたと言われても、証拠がないからだ。

 双方の話し合いで解決しない場合

消費生活センターの相談員によると、市町村で行う無料法律相談へ行くのが良いそうである。敷金の返還請求の仕方や、場合によっては少額訴訟の方法までアドバイスしてくれるようである。

※しかし、無料相談はあまり役に立たなかった。その話はコチラ↓。

法律相談

市町村等で行う15分の無料法律相談が役に立たない件~ネットで十分!

2017年7月27日





これからどうするか

私の場合、まだ一方的に請求をもらっただけなので、法律相談の前に、大家と協議する必要ありそうだ。それで平行線なら法律相談だろう。

ということで、わたしの主張を書いて送ることにした。

以下その文章


仲介不動産業者様

大家 様

 

平成29年6月22日

住所  〇〇〇〇〇

私の名前 〇〇 〇〇

 

(アパート名)の 原状回復と敷金について

 

前略 先日表記に係る請求書を受け取りましたが、これに対する私の異議と主張を申し上げます。

結論から申し上げます。今回のご請求の中身は原状回復に当たらないためお支払い出来ません。よって、敷金は全額返済を速やかに行っていただくようお願いします。

尚、原状回復に関する根拠は、国土交通省住宅局の定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。

また、頂いた請求書を都道府県の消費生活センターへ持参し相談させていただいた結果も、上記結論と同じであることも申し添えます。

以下、念のため請求書の内容が原状回復に当たらない旨、列記いたします。

 

〇クロス張替(洋室西面)

該当の壁面は1㎡に満たない程度の茶色い変色があったで、それのことを請求されているのだと推察するが、どうしたら私が故意に茶色に変色させられるのか説明及び証明していただきたい。納得ある説明があれば支払わざるを得ないと考える。

日光による変色ならふつう逆に該当部分だけが白くなるはずであるし、クロス自体に問題があるかもしれないし、最初からあったのかもしれない。

しかも、入居して10年が経過しており経過年数・通常消耗の観点から私の負担率は限りなく低いと考える。また、仮に支払うとしても該当の変色部分のみの負担が妥当と考える。

以上より私が負担すべきではないと考える。

 

〇CFシート張替

経年劣化・自然消耗と考えるのが妥当。

 

〇畳表替え・襖張替え

自然消耗と考えるのが妥当。

〇ハウスクリーニング

通常の清掃はしています。次の入居者のためにする清掃は貸主負担と考えるのが妥当。

 

全体的に、私が負担しなければならない根拠が分かりません。

前述のガイドラインによれば、家賃には経年劣化・自然消耗分が含まれていると解釈できるし、最高裁の判決でそう示されたとも記述されています。

また、本賃貸借契約の修繕費用の負担範囲にも経年劣化・自然摩耗は除くと記載されています。

それに付け加え、私は10年も住んでいましたし、入居時も前の入居者の後、業者クリーニングもなくそのまま入居しております。よって、経年劣化・自然消耗は大いにあり、しかも入居時の状態がどうであったか証明もできない。つまり、私が経年劣化・自然消耗以外で物件に対して毀損したと証明できないと考えます。

よって、頂いた請求書は原状回復に当たらないため、お支払いできません。

また、速やかに下記口座へ敷金の返金をお願い致します。

〇〇銀行 〇〇支店 口座番号 口座名義

このような言い争いは私も望むところではありません。今後の対策として、①入居時に現状を双方で確認し写真をとり、双方で保管する。②賃貸借契約書に原状回復については国交省のガイドラインに従う、又はガイドラインによらず独自の特約を設けて厳密にするなどの記述を加えるなどの対策を強くお勧めします。

 

草々

 

 




 

さて、その後どうなったかはまた後日。

【追記】

…と、あれから3ヶ月経ったが相手からは何の連絡もなし。私も会話すらしたくない相手なので何の進展もありません…。

そろそろ敷金の請求書の一枚でも送らねばなるまい。請求をしても返してくれないという事実が必要だ。(内容証明郵便など)。

それで返金されないなら、少額訴訟しかないわけだが、手間を考えるとウンザリだ。まだ時効にはならない、決心が定まるまでもうしばらくかな。

大家にしてみれば、原状回復費用がもらえなくても、敷金の分だけでもあれば十分と考えているのだろう。

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ABOUTこの記事をかいた人

うつ病手前になって退職したり、会社から損害賠償求められたり、逆に精神的苦痛に対する慰謝料を請求したり、アパートの退去で高額の原状回復費用を求められたり、円錐角膜という病気になったり、そんな人生をブログにしてます。 現在は仕事を探している。 長野市で開催されるコンセプトカフェイベント「ルドロウキャッスル」を応援しています。