給与や退職金から差し引くのは労働基準法違反だけど…
ことの始まりと経緯
今年6月末日で退職したものの、10月になっても「退職金」の支給と会社に預け入れた「出資金」が返還されない。
このまま放っておかれても困るので、請求をすることにした。
その返答がタイトルの通りである(仕事のミス20万円を差し引く)。
ただ、「退職金」については、中小企業退職金共済を利用しているため、共済から支給されるので基本的に差し引くことはできない。また、退職金を減額することはできるが両者の同意がいるので事実上不可能である。
だから会社がとった行動は「出資金」からの相殺だった。
56万円の出資金の返還を求めたが、損害賠償として20万円差し引くということだった。
※20万円のミスと退職までの経緯についてはコチラ↓
労働基準法の落とし穴
このような事態はある程度想定していたため、ドキッとはしたが、対処法は決めてあった。
労働基準監督署への相談である。
サブタイトルのとおり、労働基準法では同意のない賃金からの相殺を一切禁止しており、そのような事実があった場合は労基署は直接企業を指導することができる。
実際に相談した結果
しかし、出資金(株式のようなもの)は賃金ではないため、労働基準監督署は直接介入できないできないとのことだった。
さらには、損害賠償の問題については、民事の扱いになるため、労働基準法では決まりがなく、これも労働基準監督署は直接介入できないのだった。
つまるところ、労働基準法は、賃金からの相殺・差引については同意が無いこと自体を問題とするのであって(確たる同意があればもちろん問題ない)、損害賠償自体については禁止していないのだ。
となると、労働基準監督署は今回のケースでは何もできないということになる。
実際に、労働基準監督署では何もできないと言われてしまった。
仮に給料から損害分が差し引かれた場合は、労働基準監督署の指導により取り戻すことができるが、損害賠償の問題自体は残ることになる。
仕事のミスはやはり自分で始末をつけるしかないということだ。
どうすべきか?
しかし、これには困った。あてにしていた労基署が役に立たないからである。
民事裁判などで争うしかないということのようだ。
ちょっと前に、アパートの原状回復費用と敷金の返還でもめたことがあるので、その解決法と手順は同じになるだろう。
つまり、内容証明郵便で主張及び返還請求。応じないようなら少額訴訟という流れである。
※その時の話はコチラ↓
面倒だがやるしかない。
精神的苦痛に対する慰謝料請求
困り果てた私だったが、労基署との話し合いの中で別の解決の糸口を見つけることができた。
精神的苦痛に対する慰謝料請求である。
仕事のミスと退職の経緯の私のブログを上記で紹介したが、私はこの損害賠償の事件をきっかけにうつ病手前にまでなっていたのだ。
労働基準監督署の話では、これは精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるとのことだった。
症状の程度は関係ない
私は完全にうつ病と診断されたわけではない。手前と診断された。だから、慰謝料請求などできないと思い込んでいたが違った。
精神的苦痛の感じ方はその人次第であるから、症状は関係がないそうだ。ただ、それが原因で心療内科にかかったことがここでは重要な事実であったのだ。
うつ病患者にありがちな、自分はダメだろうみなたいな遠慮はする必要がないのだ。
慰謝料を請求できるが、相手が応じるかは別問題
しかし、これにも落とし穴はあった。
慰謝料を請求できると言っても、それは自分の心の傷をえぐりながら自分でやるべき作業であるため、極めてつらい作業であるということ。当たり前だが、労基署が代わって請求してくれることはない。
そして、請求ができるだけで、相手方に支払わせる強制力はない。つまり、支払ってもらえない場合も当然ありうるのだ。
ちなみに、慰謝料には相場がない。自分が感じる納得できる金額でよいそうだが、数十万クラスが多いようだ。
請求に応じない場合
紛争調整委員会によるあっせん
この場合、労働局において「紛争調整委員会によるあっせん」を申請できる。
利用するには、紛争状態であることが必要だ。無料で利用できる。
申請にもとづいて、調整委員会が当事者双方から事情を聴き、解決案をあっせんしてくれるのだ。
ただし、こちらもそのあっせん内容に強制力はない。突っぱねられたら終わりである。
ちなみに、このあっせん制度は、上記にあるような仕事のミスによる損害賠償においては使えないとのことだ(民事であるため)
あっせんで解決できるか
しかし、労働局が間に入ることで、問題解決につながる可能性は高くなる。
さすがに労働局の名は威厳があるので、イメージダウンを避けたい企業は慰謝料支払いに応じる可能性が高くなるそうである。
逆に、全く応じない会社もあるそうだが、そういう会社は顧問弁護士を立てて要求を拒否するケースが多いそうだ。
企業の顧問弁護士ならば、企業の利益を守るために、強制力がないと分かっている要求は拒否するのであろう。
もしも、要求が拒まれたら、こちらも弁護士に相談するか、裁判所の制度を使うしかないだろう。
このような顧問弁護士の態度はある種の尊敬に値するが、事案によっては企業に金銭的な損はないだろうが、長い目で見ればイメージダウン、社内不和などの別の不利益をこうむることになるだろう。
しかし、労働局の話ではこのあっせんで解決に至るケースの方が多いようだ。
私のケースで利用するには
現段階では、一方的に20万円を差し引かれただけであり、「紛争状態」にあるとは言えないため、まずはこちらから「請求」を起こす必要がある。
それに応じてくれれば問題ないが、それでも一定期間応じてもらえない場合は利用できる。
いろいろある相談機関と制度
私の場合たまたま精神的苦痛の事実があったため、慰謝料請求や紛争調整委員会によるあっせんが利用できるが、そうでない場合、仕事のミスによる損害賠償にどう立ち向かえばよいのか。
私の調べたもの、実際に利用したもの、労働基準監督署が教えてくれたものなど紹介しよう。
労働基準監督署
労働問題について、まずは相談してみるとよい。
誰でも思いつくだろうが、なんだかんだ言いながら頼りにできるのは労働基準監督署である。
法テラス
注意したいのは、法テラス自体では相談を受け付けていないこと。あくまで、どこに相談したらよいか、近場の無料相談機関を紹介してくれるだけである。
しかし、実際利用してみて、こんな相談機関もあったのか、と思えたので利用価値は高い。
以下2つは法テラスからの紹介。
各都道府県の弁護士会
私の住所地の都道府県の弁護士会はたまたま、労働問題に関する無料相談を行っていた。行っていない都道府県もあると思われるので注意が必要だ。
連絡をすると、折り返し所属の弁護士が電話をくれる。電話相談で20分程度だ。
電話相談なので上手く要点を伝えないと無駄になる。また、弁護士によって得手不得手もあろうから善し悪しだ。
しかし、無料で利用できるのはありがたい。有料で弁護士に相談するとなると、1時間1万円が相場だ。
まずは電話して、どうしたらよいのか方向性を決めるのに役に立つだろう。
日本労働弁護団
労働問題専門の弁護士の集まり。法テラスで聞いて初めて知りました。
無料電話相談が利用できるが、利用できる曜日と時間が限られているのが欠点。
ちなみに、何度か私も電話したが、全くつながらなかった。
しかし、専門であるため問題解決には都道府県の弁護士会よりは期待ができる。
全国組織であるため、全国から限られた時間に相談の電話が殺到するのだから当たり前だろう。利用するには根気がいる。
都道府県によってはこの弁護団の支部が存在するようだから、該当する人はそちらに電話してみるとよい。
私の場合は支部はなかったので本部にかけたが、残念ながらつながらず、あきらめた。
労働問題で悩む人は多いということだ。
裁判所
最終手段。手間もお金もかかるが、高額な争いやどうしても納得のいかない事件の場合は利用するしかない。
裁判所にも調べてみたら様々な制度がありますが、有効なものは下記2つです。
メリット・デメリットはありますが、通常の訴訟に比べて手間もお金もかからないので、利用価値は高いと思われます。
民事調停手続
話し合いにより解決を目指します。弁護士に頼まなくても自分でできるのが利点。
デメリットは相手方が最初から話し合いに応じない場合、どうにもならないこと。つまり強制力がない。話し合いの末に合意に至らない場合も不調となり解決にならない。
ただし、一度調停で合意に至った場合は強制執行ができる。
少額訴訟手続
60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用できる。こちらも弁護士がいなくても、自分で訴訟を起こせる。
民事調停の弱点である相手方がただ応じない場合でも、こちらの訴えが認められれば強制執行が可能。無論、判決にも法的に効果があり強制執行が可能だ。
ただし、民事調停に比べて訴状の作成、証拠の収集、提示は自分でやらなければならないため少々苦労する。また、相手が少額訴訟の手続きによることを反対した場合等には、通常の訴訟手続きに移行してしまう。
その他
「民事訴訟手続」「労働審判手続」などがありますが、どちらも専門家である弁護士に依頼しないと難しい。弁護士に頼むと着手金だけで数十万円はかかるので、事案によっては元が取れないし、こちらに不利な判決が出た場合、当然こちらが損をする。
高額な案件や、金額以外の部分に意味のある訴訟ならばこれらの手続きをとる価値はある。
私の場合(精神的苦痛と仕事のミスによる損害賠償)
まずは、内容証明郵便を作成して送ることにした。労働局による「紛争調整委員会によるあっせん」を利用する条件、紛争状態であることを証明するためだ。
もっとも、内容証明郵便でなくても、普通の通常郵便でも構わないらしいが、後のことを考えて内容証明郵便を利用することにした。できれば、これだけで解決したいという思いもあるからだ。
正直、会社は退職したものの、この損害賠償を件に、精神的苦痛がまたひどくなってきており、しんどい。出来るだけ穏便に速やかに解決したいものだ。
解決のためのフローチャートとしては、
内容証明郵便
↓
労働局による「紛争調整委員会によるあっせん」
↓
裁判所にて少額訴訟手続き
と、いったところだ。
結果、内容証明郵便を送った段階で円満に解決した
内容証明郵便を送った後、2回ほど電話で話し合いをして解決した。
その話はコチラ(無事に円満解決いたしました!)
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