高額な原状回復費用の無効と敷金の返還を求めるために内容証明郵便を出した話

内容証明郵便

こう着状態に終止符を打つべく敷金返還を求める

あらすじ

10年住んだアパートを退去した際に、大家さんから217,000円の原状回復費用の請求書が届いた。消費生活センターに相談したり、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を読んだりして、この請求は無効だと思ったので反論の文書を送ったものの、その後大家さんからは何の連絡もなし。敷金も返ってこない(金額は82,000円)。

10年住んだ3DKアパートの大家からの原状回復費用請求が20万越えだった話

2017年6月23日

敷金返還のための内容証明郵便

やはり自分からアクションを起こさない限りどうにもならない。しかし、直接の話し合いは出来ない、相手は大家さんであると同時に私がうつ病手前になるきっかけとなった上司だからだ。もっとも、普通の話し合いで、はいそうですねと簡単に敷金を返してくれる相手でもないので、内容証明郵便を送ることにした。

内容証明郵便

メリット

直接、話し合う必要がない。話し合いに応じない、話し合いが上手くいかない、話し合いができない状態の場合に有効だ。

格式ばっているので、一定の説得力がある。ある程度知識のある大家さんや、気の弱い大家さんなら面倒ごとを避けるため、これで敷金返還に応じてくれる可能性がある。

証拠として残して置ける。内容証明郵便を送っても敷金が返還されない時は、少額訴訟などの手続きを取るしかないが、その時に提出する証拠として使える。つまり、敷金を返してくれと言ったのにかかわらず、返してくれないという事実を公的に証明できる。

時効を中断できる。退去した日からではなく、内容証明郵便で請求した日から時効までの年数を計算するようになるので、時効を延ばすことができる。もっとも敷金返還の時効については5年あるので、そうそう時効にはならないはずですが。ちなみに、一般的な債権は民法による10年の時効ですが、敷金に関しては商法が適用され5年と考えられているそうです。

デメリット

法的拘束力はない。内容証明郵便で請求したからと言って、請求を受けた側に支払う義務は発生しない。あくまで請求人の権利を主張するだけになります。

お金がかかる。通常の郵便であれば、82円か92円で済みますが、内容証明郵便の手数料がかかります。料金の計算方法は割愛しますが、私の場合、1300字程度(用紙5枚)で2,302円かかりました。

文章を作成するのがたいへん。文面を作成するのは、慣れていないと大変です。今はネット上で例文がいくらでも手に入りますが、やはり自分の状況に合わせて文章を変えたりするのは面倒です。

また、用紙サイズ、縦書き・横書きなどは自由ですが、一枚の用紙の中で、行数の制限と1行の文字数の制限があります。Wordで書類を作成する場合は、原稿用紙設定を使うと簡単ですが、設定に少々注意が必要です。マス目の有る原稿用紙設定ならば、郵便局の人も確認するのが簡単なので親切でしょう。

※Wordの原稿用紙設定注意点※

・ヘッダーとフッダーは「なし」にする

・句読点のぶら下げを行うのチェックを外す

※これをやっておかないと、字数オーバーで訂正もしくは再作成をしなければならない場合があります。

原稿用紙設定

 

参考になるサイト

内容証明郵便については、こちらのサイト(内容証明net)が参考になりました。

http://www.naiyo-shoumei.net/index.html

私が実際に送った敷金返還請求の内容証明郵便

ネット上にいろんな例文がありましたが、上記で紹介したサイトの例文が、非常に専門的な内容で効果がありそうなので利用させていただきました。

利用した例文へのリンクはこちら

http://www.naiyo-shoumei.net/j15.html

そして、下記が私が実際に送った文章です。上記の例文を私の事情に合わせて変更させていただきました。

青色の字は私が追加・変更した部分です。

敷金返還請求通知書

平成29年10月12日

被通知人

〇〇県△△市◇◇

〇〇 △△ 殿

通知人

〇〇県△△市◇◇

北住 大輔

 

私は、平成19年7月3日より、貴殿が所有している下記建物を借り受け、居住しておりました。

所在地:〇〇県△△市◇◇

建物名: (アパート名)

部屋番号:〇〇〇号室

そして、平成29年5月31日に同物件を貴殿に明け渡しました。

しかしながら、建物賃貸借契約の締結時に敷金として預託しておりました金82,000円につき、すでに建物明け渡し後、相当な期間が経過しているにもかかわらず、貴殿からは未だ返還をして頂けておりません。

なお、私は賃借期間中、細心の注意をはらって生活してきたものであり、賃料の滞納もなく、同物件に関して経年劣化以外に、通常の使用を超えるような消耗はありませんでした。

それにもかかわらず、貴殿は仲介業者である(不動産業者名)を通して、高額な原状回復費用を敷金と相殺し、その残額を請求書として平成29年6月15日付けにて送ってこられました。

これに対して消費生活センターと相談し、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を精読したうえで、平成29年6月22日付にて上記仲介業者を通して貴殿の請求は、私が負担すべき原状回復にあたらないこと、及び敷金の返還を求めることを主張させていただきました。

当然ご承知のこととは思いますが、民放606条1項においては、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うと定められ、最高裁判所平成17年12月16日の判例により、通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗などの必要経費分は、通常、賃料の中に含まれていると解されております。

また、消費者契約法第9条1項1号では、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定等について、平均的な損害の額を超えるものは、その超える部分について無効であるとされ、同法10条においても、民法、商法等による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するものは、無効とされております。

よって、繰り返しになりますが国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の例示する以下の趣旨に反した費用について、敷金から控除することは、これをすべて拒否いたします。

  1. 次の入居者募集や確保の為に行うもの
  2. 物件の管理上の必要から生じるもの
  3. 自然損耗や通常の使用により生じるもの

また、仮に賃借人の故意または過失によって生じた損害であっても、クッションフロア、クロスなどは経過年数6年で減価償却されて1円の評価となりますので、賃借人の負うべき責任範囲は、新品購入した時点から6年を経過した時点で1円になる範囲に限られます。

なお、「賃借人の責任の有無にかかわらず、また、居住年月日の長短にも関係なく、解約時には当然に修繕費用を敷金から差し引く旨の特約は、無効である。」という趣旨による判例も数多くあります。

つきましては、貴殿に対し、本書面到着後1週間以内に、金82,000円を下記口座へ返還されるよう請求致します。

よって、返還して頂けない場合には、残念ながら、〇〇簡易裁判所において少額訴訟の手続きをとる所存ですので、ご承知おき下さい。少額訴訟は60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用ができ、原則1回の期日で審理を終え判決がなされます。訴訟に関する費用はわずかでありながら、判決書に基づき強制執行の申し立てが可能であることも併せてご承知おきください。

口座情報:〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 1234567 キタズミ ダイスケ

青字部分の解説

それにもかかわらず~以下

実際、多少のやり取りがあったので改めて触れてみました。とにかく細かく、いろいろ手を尽くしているのに返してくれないという事実を、内容証明郵便にて訴えるとともに、公的証明として残しておけるので、あとあとの訴訟に有効になるかと思い書きました。この部分は完全に追加なので、なくても問題はないと思います。

繰り返しになりますが

私が上記で追加した文章で既に、この後に続く、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について触れてしまっているので追加しました。

余談ですが、この「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は絶対読んだ方がいいです。

クッションフロア・クロス

原文は、「畳床、カーペット、クッションフロア、クロス」となっていました。私の借りていた物件には関係のないものを消しました。各人の事情に応じて変更すると良いでしょう。

ただし、追加する時は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をよく読んだ方が良いでしょう。何でもかんでも経過年数6年で減価償却されて1円の評価となるわけではありません。

例えば、障子紙や襖紙などは、消耗品として扱われ、経年劣化はしない、よって減価償却もされないので注意が必要です。ただし、経年劣化がないので、退去時に必ず借主が新品にしなければならないかというと、そうではなく、自然損耗の範囲内であれば通常は貸主負担になります。このあたりは、ガイドラインや個別の建物賃貸借契約書をよく読んで判断された方がよいでしょう。

下記口座へ

例文には「下記口座へ」という記載はなく、ただ請求するのみとなっています。さらには、文章一番下の口座情報も追記しました。

書いておいた方が親切だと思い追加しましたが、私は口座情報を間違えて記載して送ってしまいました。気がついた時には文書を送ってから5日も経過していました。慌てて、訂正と支払期限もさらに一週間延ばす旨を書いて、速達・簡易書留にて送りました。

全体に言えることですが、よく確認して文書を作成する必要があります

〇〇簡易裁判所において~

原文では、「宅建協会や国民生活センター、消費者センター等の関係機関への申告や、訴訟・仮差押えその他の法的手続き、などの然るべき対応をとる所存ですので、ご承知おき下さい。」となっておりますが、変更させて頂きました。

頭の良い大家さんだと、これを読んでも、実際にこんな面倒なことはしないだろうと、たかをくくられそうだと思ったからです。実際問題、金額にもよりますが、少額の敷金返還に対してお金をかけてまで法的手続きはせずに泣き寝入りする人も多いのではないのでしょうか。

なので、きっちり少額訴訟という手続きで確実に返してもらいますよ、ということを強く訴えるようにしました。

この文章は相手によって変えるべきでしょう。

 



 

郵便局に内容証明郵便を出すときの注意点

詳しくは、上記でも紹介したこちらのサイト(内容証明net)をご覧ください。

作文がどうしても難しい場合なども、このサイトの主さんは行政書士の方なので有料ですが請負ってくれるでしょう。

必要なもの

①送る文書 

②送る文書のコピー2部 

③送るための封筒 

④お金(3,000円あれば余裕) 

⑤印鑑(認印で可)

※送る文書が用紙2枚以上になる場合は、ホッチキスで2カ所留めの上、割り印が必要になります。

※送る文書のコピーも同様に2枚以上の場合は、ホッチキスで2カ所留めの上、割り印が必要になります。

※送るための封筒には、あらかじめ宛先と自分の氏名住所も書いておきます。

※印鑑は、割り印したものと同じものを持参する。訂正が必要な場合必要になる。

手続き

・手続きは比較的大きい郵便局でなければ、できなようです。簡易郵便局はさけましょう

・配達証明付きで良いか、と聞かれる場合がありますが、配達証明付にしてもらいます。

・意外に時間がかかります。私の場合、書類を受け取ってもらってから、1時間後ぐらいに携帯電話に、確認が終わったので再び来局してほしいと連絡がありました。すぐその場では終わりません。

・私の場合は、訂正は無くそのまま受け取ってもらえました。そして、郵便局に判子を押してもらったコピーの1部を受け取り、送る文書を封筒に入れて封をして、料金を払っておしまいです。

後日、配達証明書が郵便局からハガキで届きます。私の場合、その日の午後に送って、2日後に相手に到着し、さらにその2日後に配達証明書が私の手元に届きました。郵送する距離にもよりますが、相手に確実に届いたとわかるのに、4日は必要です(同じ県内の別市内の場合です)。

注意点!

記載事項に誤りがないように、よく確認してから送りましょう。上述の通り、私みたいに口座を間違えて記載すると、お金が返ってこないばかりか、とても恥ずかしい思いをします。



敷金返還請求に対する内容証明郵便の実際の効果

記載内容の凡ミスにより相手から先に連絡が

口座を間違えて書くという恥ずかしい凡ミスをしてしまったことに気が付いて、すぐ訂正の文書を簡易書留の速達で送りましたが、それが届くより先に相手から文書が届きました。

内容は、敷金を返還しようとしたものの振込できないので、正しい送金先を連絡くださいとのこと。

内容証明郵便の効果はあったことになりますが、なんとも恥ずかしい指摘を受けてしまいました。

しかも、「健康に気を付けて今後ご活躍ください」との一文が添えられており、敷金を取り返そうとして躍起になっている自分が小さいもののように思えてしまいました。人間的な器と余裕は相手の方が上でした。

ともあれ返還してもらうことに成功!

無事に期限内に全額を返還してもらうことができました。

相手の大家さんも賢い人なので争い事は回避しようということで、私としても面倒な少額訴訟は避けたいところでしたので一安心です。

権利は主張してこそ意味がある

結論になりますが、敷金・原状回復費用でのもめ事は面倒ですが、自分の権利は主張すべきでしょう。

私の場合は何とか円満解決しましたが、訴訟まで発展してしまう場合も、明らかに借主に非が証明される場合もあるかもしれません。

しかし、泣き寝入りすることなく、思い込みや間違った常識にとらわれることなく声を上げることが大事ですね。

これまでの経験をもとに、原因と対策をあらためて下記ブログに書きました。

よかったらこちらもお読みください。

原状回復と敷金

退去時の敷金と原状回復の問題 原因4つと対策4つ(まとめ)

2017年10月31日

新たな問題の発生

普通はこれで、めでたし、めでたし…となるはずですが、また違った問題が発生しました。

ここの大家さんは、私の上司でもあり、この上司と「ある事件」をきっかけに、私は仕事のミスによる損害賠償を求められ、敷金・原状回復の問題が解決した後に(会社を退職した後でもある)新たな問題となって立ちはだかるのでした。

ブログ放置ダメ、ゼッタイ

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仕事のミスによる損害賠償

退職後に仕事のミスによる損害20万円を強制徴収された話

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ABOUTこの記事をかいた人

うつ病手前になって退職したり、会社から損害賠償求められたり、逆に精神的苦痛に対する慰謝料を請求したり、アパートの退去で高額の原状回復費用を求められたり、円錐角膜という病気になったり、そんな人生をブログにしてます。 現在は仕事を探している。 長野市で開催されるコンセプトカフェイベント「ルドロウキャッスル」を応援しています。