応募書類・面接対策セミナーから学ぶ転職のポイントと問題点

就活




企業優位の採用制度

各地域のハローワークによって内容や開催頻度は違うと思われるが、ハローワークでは無料で「応募書類・面接対策セミナー」が開催されている。これはハローワークに求人登録をしていなくても、予約さえすれば受講できるので、応募書類の書き方がよくわからない、面接が不安、何度も応募しているが採用されないという方は、ぜひ一度受けておいて損のないものとなっている。

 

応募書類・面接対策セミナー受講のメリット

 

応募書類の書き方にはテクニックが存在する

学校の試験や、受験入試のように応募書類の書き方にもテクニックが存在する。セミナーでこのテクニックを学び実践すれば、採用される確率はぐんと上がるだろう。ただし、試験や入試と違って完璧な正解というものが存在しない、言わば応募する企業ごとに正解が違うわけだから、あくまで採用される確率が上がる程度だ。しかし、このテクニック知っているのと知らないのでは雲泥の差があるのは確かだ。

 

採用にあたり重視されるのは「人間性」

某地域のハローワークの調査では企業が採用の際に重視するのは「人間性」と答えた割合が約74%にのぼったという。おそらくこの傾向は全国どこでもほぼ同じと考えられる。

人間性と一言にくくってしまうと分かりにくいが、具体的には「意欲」「やる気」「明るい」「元気」「笑顔」「人柄」「性格」などのことであるそうだ。

求職者にとっては「人間性」よりその企業に勤めるうえでのスキルや経験の方が不安を覚えると思うが、この結果は悪い話ではない。むしろ朗報である。経験や実績ではなく人間性を重視して採用されるのであれば、未経験の業種に転職することも十分可能である。

求職者は恐れることなく自分のやりたい仕事に思い切ってチャレンジするべきであろう。

「人間性」に自信がない場合はテクニックでカバー

なかには、「意欲」「やる気」「明るい」「元気」「笑顔」「人柄」「性格」に自信が持てない求職者もいるだろうが、心配無用だ。セミナーで学ぶテクニックですべてカバー可能だ。

詳細なテクニックは実際にセミナーを受講して自ら学んで身に付けてほしいが、簡単に言ってしまえば、短所の「裏返し」をすることである。例えば、優柔不断であれば、協調性がある・心配りができるからであるというように。

とにかくポジティブ思考で、前職の不平不満などマイナス面は一切出さないのがポイントだ。

ただし、当然嘘になってはならない。どうしても「裏返し」できないことであれば触れないでおいた方がよいようだ。

 

自分の都合・希望は書かない

「人間性」を強調するあまり、自分の都合ばかりを履歴書に書いてしまってはダメだ。例えば、成長できそうだからだとか、達成感を得たいなどだ。

企業にとっての第一は企業にとってメリットがあるかどうかだ。求職者の都合や希望はその次だ。自分を採用すれば企業にメリットがあるということを念頭に置いて応募書類や面接に臨むのが良い。

普通に考えて、自分の都合や希望ばかりを言う人と、企業のことを第一に考えてくれる人、どちらを採用したいかは一目瞭然だろう。だが、就職活動に不安ばかりをつのらせていると、つい自分のことばかりを考えがちになりこの罠にはまりやすい

 

セミナーのメリット総括

以上が「応募書類・面接対策セミナー」を受講して良かったと思えた点だ。他にも細かいテクニックや有効な対策があるので、受講するメリットは大いにある。

簡単に言ってしまえば、未経験の業種であっても自分のやりたい事であれば、恐れずにポジティブに臨むことで採用される確率は上がるのだ。

しかし、同時に心配な点やおかしな点にも気づいてしまった。以下ではその点について述べる。

 

就職活動の問題点

上記のようにテクニックを活用して、真摯に臨めばいずれは就職できるだろう。その方法や採用制度におかしな点があったとしても、それに文句を言っていては、そもそも就職なんてできない。しかし、あえて言わせてもらう。

素直に従っていると、それを悪用する企業もいるからだ。

 

求職者側の問題点

求職者としては以下のような点が不安になる。不安になるだけならまだよいが、行き過ぎると結局、企業への不信感となる。

 

字が綺麗か汚いか

セミナーでは字が綺麗か汚いかは採用には関係がなく、丁寧に書くことが重要だとされている。汚い字でも丁寧に書かれていればよいわけだ。確かに、字を見ればその人の気持ちが現れているように見える。

しかし、これは建前であって、やはり字が汚いのは不利であるとしか思えない。履歴書の記入はなぜか自筆が好まれるので、綺麗に書けるに越したことはない。

もっとも、職種によっては字を書く必要があまりないし、事務職などでもパソコンの使用が多いので、字が汚くてもあまり業務に差支えはなくなってきている。履歴書もすべてパソコンで作成しても問題ないと思うのだが、どんな字を書くかは選考基準の一つになっているのかもしれない。

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2017年9月26日

 

履歴書のスペックの問題

新卒では問題にならないが、転職においてはいろいろ問題が増える。

年齢、学歴、職歴がそれである。若くて高学歴で転職を繰り返してはおらず大手で数年の経験があれば全く問題ないが、むしろそうではない人の方が多いだろう。ある程度は短所の裏返しでなんとかなるが、年齢だけはどうにもならない。

聞いた話ではアメリカでは履歴書に生年月日を書く欄がないそうである。年齢による差別をなくすにはそれしか方法がないのだろう。

日本の企業は書類選考を重視するから、どうしても実際の業務の適性より年齢・学歴・職歴が優先されがちなのは問題がある。というより、履歴書で分かることなど限りがある

 

企業の求める人材像がわからない

字の綺麗さや、履歴書のスペックで採用がされているのではないかという疑念は、企業の求める人材像が求職者には全く分からないから起こるものだ。すなわち、不採用理由が分からないことが問題だ。

「お祈りメール」という言葉が示すように、不採用になった際にはその理由は明らかにされない。今後の益々のご活躍を心からお祈り申し上げます、などという文言しかないから「お祈りメール」と呼ばれているように、採用の基準が全く不明なのだ。

なんとなく気に入らないという理由でも「お祈りメール」でなら簡単に断れる。字の綺麗さや履歴書のスペックで判断されているのではないかという疑念は晴れない。

不採用の理由を直接本人に伝えるのが難しいのなら、求めている人材像をはっきりと示すべきであろう。そうであれば、自分はその基準に足りていなかったのだと納得もできよう。

折しも、大学入試問題の出題ミスの問題が叫ばれているが、解答が出せないような問題や、間違った解答で合否を決めている姿は、企業の採用活動においても同じように見える。正しい評価が下されているかは疑問である。

履歴書の写真がスーツでないからという業務には全く関係がない点で、その人間のすべてを否定し不採用とするような基準では、とても厳正な審査とは言えない。一言10秒注意して済むような問題より、他に仕事をするうえで大事なことはいくらでもあろうに。

スーツの見た目

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2017年10月28日



 

企業側の問題

企業の立場としても、採用活動はいろいろ問題がある。低コスト・低リスクで優秀な人材が欲しいのである。しかし、それを実現できる採用方法はない。

 

履歴書と面接で何がわかるのか

はっきり言って、良い人材かどうかは実際に仕事をしてもらわないとわからない。多くの場合、書類選考と面接で採否が決まるが、それだけでは実際に仕事の適性があるか、長く続くかどうかはわからない。実際に仕事をすることで、才能を開花させる者もいれば、脱落していく者もいる。

つまるところ、応募者が優秀な人材かどうかは書類選考や面接ではわからない。しかし、企業はできるだけリスクは少なくしたいので、あとあと問題を起こしにくそうな人材、すなわち「人間性」で判断するしかないのだ。

企業側も採用には苦労していることは、とてもよくわかる。しかし、人間性重視が行き過ぎると問題しか起こらない。

 

偽造できる人間性

応募書類や面接はテクニックである。それは最初に述べた通りだ。となると、「人間性」もテクニックによって作り出すことができるということになる。もちろん、嘘はいけないが、見破れない嘘ならどうしようもできない。嘘とまでいかなくても、短所の裏返しによる優れた人間性の表現なら、ある程度テクニックによってできてしまう。そうすると、企業としても「人間性」で判断して優秀と思っても、その応募者の本質を見誤ることもある。今度は逆に長所の裏返しで、採用してみたら全然使えない人材だったなんてことも起こり得る

しかし、企業としても人間性以外に判断基準を持たないし、書類選考と面接でしか判断できないので、先にも述べたような履歴書写真だとか細かい部分で応募者を試すしかなくなるのである。当然、それは対策されてしまうので、いたちごっこ。悪循環に陥っていしまっている。

 

制度の問題

現在の就職活動、採用制度自体にも問題がある。人間性重視の選考の弊害が発生している。

 

テクニックの極意は「滅私奉公」「社畜精神」「奴隷根性」

これは私が応募書類・面接セミナーを受講した感想である。セミナー受講の感想を最後書いて提出するのだが、本当にそう書いて提出してきた。

テクニックの一つに、「自分の都合・希望は書かない」というものがあったが、まさに「滅私奉公」のことだ。自分のことは殺して企業に奉公する精神が求められているのだ。

短所の裏返しにしても、とにかく企業の役に立たなければ採用されないのだから、奴隷根性を発揮して短所の裏返しを行う必要があるし、その方が採用されやすいだろう。

企業は利益を追求する。そしてリスクは排除する。とすると、奴隷のような人間の方が扱いやすいだろう。奴隷だが能力があって社畜精神もある人間が望ましいのだ。

もちろん、企業が公然と滅私奉公・社畜精神・奴隷根性を口にするわけがないし、実際そこまでしろとは思っていないだろうが、間違いなく、滅私奉公・社畜精神・奴隷根性の3つを持っている人間は採用されやすいだろう。

 

企業と労働者は本来対等

労働は契約である。企業と労働者は本来対等な者同士として労働契約を結ぶ。しかし、実際は違う。企業が上で、労働者は下だ。採用制度を見れば明らかだ。

古くは年功序列・終身雇用が当たり前だった、それが結局労働者にとってもメリットがあったので、労働者も多少は無理な命令にも従ったし、つらい仕事にも耐えてきた。企業が上で、労働者が下で問題がなかった。

しかし、ご承知の通り、年功序列・終身雇用は崩れている。だが、企業と労働者の関係だけは変わっていないのだ。年功序列・終身雇用がなければ、企業に奴隷のように従う理由はないはずなのだが、そもそも企業と労働者は本質的には対等になり得ないものだ。法律上は対等だが、実際には直接の指導・規制がなければ、はっきりと上下関係があらわれる。

年功序列・終身雇用と引き換えに、法律上の対等は主張せずに企業に従った労働者だが、今はその2制度は保証されない上に、企業から滅私奉公・社畜精神・奴隷根性を求められるので極めて不平等だ

これは結果的に、労働者の企業に対する不信感を増大させた。それを企業がさらに労働者を縛り付けようとすると、労働者はますます不信感を募らせる悪循環に陥っている。

全ての会社がひどいとは言わないが、程度の差はあれどどの会社にも当てはまるのではないか。

 

ブラック企業に有利に作用

そして、滅私奉公・社畜精神・奴隷根性を極めたさらに不平等かつ劣悪な労働を強いるのがブラック企業である。ブラック企業の特徴は大量雇用に選別、そして使い潰しというサイクルである。

ブラック企業にとっては現在の採用制度は好都合である。求職者(主に新卒)は就職するために滅私奉公・社畜精神・奴隷根性のテクニックを叩きこまれているので、既にブラック企業にとって使い潰しやすい人材に育っているのである。

求職者や労働者も馬鹿ではないのでブラック企業に警戒するので、本当はブラック企業ではない会社でも、ちょっときつい仕打ちを受けたらブラック企業呼ばわりでネットに悪評をばらまかれるリスクを負ってしまっている。

その間にも、ブラック企業は労働者に違法な残業時間を課し、無理なハードワークをさせることで低コストな労働力で多大な利益を上げて、まともな企業を市場から排除しようとしているのである。

これも悪循環に陥っているのだ。

このあたりの事情は文春新書の今野春貴著「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」に詳しい。もっと凄惨な事態が語られており、その対策についても詳細に語られているので労働者は必読だ。

 

理想的な就職活動・採用活動とは

とりあえず就職することが目標であれば、四の五の言わずにテクニックを活用してひたむきに努力すればよいだろう。いくら問題があろうが、就職して稼がないことには生きていけないからだ。

だが、滅私奉公・社畜精神・奴隷根性を自分自身に叩き込むのは抵抗があるし、ブラック企業に利用されるのごめんである。かといって、企業に逆らうこともできないし、制度を改革しようなどということは個人ではできない。

我々にできることは、滅私奉公・社畜精神・奴隷根性を持たずに、対等に企業と接することだ。

対等に企業に接するには、お互いのメリットを強調して、協力的に仕事を進めていくことだ。履歴書や面接で卑屈にならず、採用担当者を感動させてしまうようなアピールが出来れば最高である。自らの先見性のあるヴィジョンにより巻き起こす感動で採用担当者を支配してしまえば、身分上は労働者が下でも対等に接していけるかもしれない

しかし、それも厳しい道ではある。せめて、滅私奉公・社畜精神・奴隷根性は表向きで企業に対して接し、内面は自由でありたいものだ。

 

それにしても、目下の私の悩みはこんな文章を書いていることが採用担当者に知られたら、絶対に採用されないだろうことだ。就活対策を学びに行って、逆に就職に希望が持てなくなった。




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ABOUTこの記事をかいた人

うつ病手前になって退職したり、会社から損害賠償求められたり、逆に精神的苦痛に対する慰謝料を請求したり、アパートの退去で高額の原状回復費用を求められたり、円錐角膜という病気になったり、そんな人生をブログにしてます。 現在は仕事を探している。 長野市で開催されるコンセプトカフェイベント「ルドロウキャッスル」を応援しています。